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2013年10月17日木曜日

「ONE DAY, MAYBE いつか、きっと」―① Introduction

















“光州事件”をモチーフにした、英国人アーティストの作品を日韓英共同制作で上演するパフォーマンスに縁あってお誘いいただき、9月上旬、最初の公演が行われた光州(광주)に見に行ってきました。
11月に高知と金沢で日本公演を予定している、この貴重なパフォーマンスを、ひとりでも多くの方に見てほしいなと思い、光州で体験してきた印象をレポートします!

作品のタイトルは
「ONE DAY, MAYBE いつか、きっと」作品公式サイト(3カ国語)
(韓国語タイトルは「ONE DAY, MAYBE 언젠가」)

Site-Responsive Performance(場の特性を活かしたパフォーマンス)を、ヨーロッパ各地を中心に展開している「dreamthinkspeak」を主宰するトリスタン・シャープスさんを中心に、オーディションで選出された日本と韓国の出演者と、両国のアートシーンを牽引するスタッフが共同制作した体験型アートパフォーマンスです。
↑この方がトリスタンさん。コメントは光州の街中で撮影されております(日本語字幕切替可)

 アートパフォーマンス? 光州事件? よく分からないけど何だか難しそう? と上の映像を見て思いませんでしたか?(私は思いましたよw) でも、実際体験すると、こ・れ・が、なかなか面白い! 実はトリスタンさんは過去のパフォーマンスを動画などで公開したりしていないそうなんですが、オーディエンスに「実際に見て、体験してもらいたい」からだそうなんですね。そのモットーは、私自身が体験して「なるほど!」と納得しました。ですので、興味を持たれた方は構えることなく「頭を真っ白にして」公演を見に行かれることをおすすめします^^

 しかし、この作品の根幹にある「光州事件」についてご存知の日本の方はどれくらいいるでしょうか? 私自身もきちんとこの事件の内容を把握したのは、韓国関連の仕事を始めてからでした。このパフォーマンスを見るにあたり、事件について知っているのと知らないのでは印象がずいぶん変わると感じたので、私もまだまだ勉強不足ですが、まずは簡単に紹介してみようと思います。

 韓国では歴史的事件を、日にちの数字で呼ぶことが多いため、韓国では「5.18(オーイルパル)」と言えば「光州事件」のことを指します。「5.18光州民主化運動(5.18광주 민주화 운동)」というのが正式な呼称。1980年の5月18日に民主化を求める光州市民と軍が衝突し、多くの死傷者を出した事件です。

 韓国映画やドラマ、そして演劇など韓国の近代史を扱った作品ならば、避けて通れない出来事のひとつ。この時代のことを知っておくと、さまざまな物語への理解が一層深まると思います。
「光州事件」にまつわる作品で、特に代表的なのが以下の3作。(各タイトルはAmazonにリンク)

(イ・チャンドン監督/99年/主演:ソル・ギョング)
光州事件をきっかけに時代に飲み込まれてしまった男の人生を回顧する作品。
個人的に初めて見た韓国映画はこの作品でした。ソル様、お若い^^


(キム・ジフン監督/07年/主演:アン・ソンギ、キム・サンギョン)
「木浦は港だ」「第7鉱区」「ザ・タワー~高層ビル火災」のキム・ジフン監督が、
市民の目線で事件を正面からドラマチックに描いた作品。イ・ジュンギも出てます。

ドラマ「砂時計」
(キム・ジョンハク監督/95年/主演:チェ・ミンス、パク・サンウォン、コ・ヒョンジョン)
 平均視聴率が50%を超えた国民的ヒット作。韓国語で砂時計のことを모래시계(モレシゲ)というのですが、当時、放送時間になると街から人がいなくなったそうで「帰宅時計(귀가시계)」とも呼ばれていたそうです。主演の3人が、未だにカリスマ的支持を得られているのはこの作品のため。
今年、惜しくも亡くなられたキム・ジョンハク監督によるニュース映像を盛り込んだ、リアルな演出はかなり斬新で、独特の悲哀を感じるBGMは一聴すれば韓国の人ならば誰もが知っているメロディー。今でもバラエティなどで良く使われています。最近でも、ドラマ「紳士の品格」でもチャン・ドンゴンほか男友達4人が学生時代にハマったドラマとして出てきていました。

3作いずれも、作品自体とても素晴らしいので、光州事件を学ぶには良い素材ですよ^^


観光ガイドブックと光州公演のフライヤーなど
今回光州を初訪問して改めて感じたのは、負の歴史を背負った街というよりも市民がプライドを守り通し、民主化へ向かうきっかけになった出来事が起きた街、と捉えられていたことでした。
事件に関連した場所を観光資源にしていて、日本語や英語、中国語のガイドマップや解説本など充実しています。観光案内所で無料配布されているので、今後光州を訪れる方はぜひ活用してみてください。


滞在が1日と短かったので、観光スポットのなかで、5.18記念会館と記念公園、旧道庁前広場だけ見ることができました。(天気が悪く、写真がよくないですがご了承を)

「5.18記念文化館」に展示してあった旧道庁前広場の80年当時の写真(左)と、現在(右)





5.18記念公園の地下にあるレリーフ。反対側には犠牲者名簿が壁に刻まれている




5.18記念公園を象徴する銅像。後ろから眺めると
自由に向かっている若者たちのようにも見える
















市内の主要な観光スポットを経由するバスは、なんと番号が「518」番!
観光ウォーキングガイドに載っていた観光コースの名前が、「5月人権の道~魂コース」とか「5月民衆の道~市民軍コース」とか、結構すごいネーミングで衝撃を受けましたが(笑)

●VISIT KOREA
●KONEST
でも光州のガイドページがありますよ。

光州は、現代アートシーンでは
アジア最大級の
「光州ビエンナーレ」⇒公式サイト を
2年に1回、偶数年に開催していることでも知られています(次の開催は来年)。
「Asian Culture Complex」
⇒公式サイト という、アジアの現代アートの拠点となるような巨大施設が2015年オープン予定。「ONE DAY, MAYBE いつか、きっと」は、そのオープンに向けたプレイベントのひとつとして行われたんですよ。 いま、旧道庁前広場を中心にした大規模工事が行われていて、工事中のフェンスやテントにはグラフィティからハンドペインティングまで、いろんな絵が描いてありました。(写真上)殺風景にならないよう工夫がしてあるのは、さすがアートの街! 加えて、昔ながらの市場、大仁(デイン)市場の中には、あちこちにギャラリーやアートスポットがあったりするんです。

魚や肉を売っている横でアート作品を展示している、このカオスたるや!

大仁市場の中にある「Ugro」というギャラリーカフェ
食堂にもカワイイ絵が描いてあったり、ハンドクラフトギャラリーがあったり。




 韓国の古き良き空気を色濃く残している一方で、今やアジアの現代アートの拠点となっている光州。このユニークな街で、英国のアーティストが、韓国の近代化の礎を築いた「光州事件」をアートパフォーマンスにする――。
よ~く考えると、なかなか凄いことだと思いませんか?

そのパフォーマンスの様子を、⇒次のページでご紹介します!

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